風林火山の旗が行く
〜CHRISTINE & ZANINIシリーズ VOL.24〜


「――何してるんだよ、CHRISTINA」
某日、イタリア、SCPのスタジオにて。
E.ZANINIがその日、CHRISTINEIをロビーで見かけた時の第一声がこれであった。
――彼女は、真剣な面持ちで木刀を持ち、構えの確認、そして素振りなどをしていたのである。
無論、スタジオのロビーでやるようなことではないのでZANINIは尋ねたのだが……
「迂闊だったの。油断してたのよ、私」
返ってきた返事はそんなものだった。
「いや、よくわからないんだが……何に油断してたんだ、君が」
「これよ、これ!」
そう言ってCHRISTINEがZANINIに手渡したのは、SEB177。
「――これの、何が?」
「17曲目よ、17曲目」
17曲目には、「PINK IN THE PINK / AI YAMAMOTO」という、同じくSCP楽曲が収録されていた。
「2曲目があるとは思わなかったわ……1曲だから見逃してあげたのに」
「いや、だから見逃してあげたの意味が」
「何言ってるのよENNIO! 彼女、どう見ても日本人でしょう!? 本物の日本人が入られたら
私の「和」はどうなるの!? 1曲オンリーだったらいいけど、この調子だとまだ出てくるわ!!
なんとしても食い止めないと!!」
「ちょっ、待て、なんだそれは!? レーベルメイトだろ!? とりあえず落ち着け!!」
というか最近お前そこから離れてただろう、とはあえて言わないでおくZANINIだった。
「第一それと今の君の木刀と何の関係があるんだよ!?」
「決まってるじゃない。一対一の決闘を挑むのよ。和風形式でね。どちらが本物の大和魂かを
証明しに行くのよ!!」
何を考え出すのかと思いきや、などとZANINIが考えていると、CHRISTINEは自分の鞄をガサゴソと
漁り始める。
「――というわけでENNIO、練習するから手伝って」
そう言って、CHRISTINEはもう1本木刀を取り出してZANINIに手渡した。
「いや、練習したいっていう気持ちは数歩譲ればわかるんだが、僕は刀剣術はないから
悪いけど練習相手にはならないぞ」
「そういう練習じゃないわ。――古来日本ではね、侍は戦う前に「やあやあ我こそはCHRISTINEナリ」
みたいな感じで自己紹介とか、アピールとかそういうのを儀式でやっていたみたいなの。
相手も日本人でしょう? こういう決闘になるに違いないわ。だから、それの練習がしたいの。
――というわけで、ENNIOどうぞ」
何故自分から何だ? という疑問を無理矢理振り払い、ZANINIは木刀を握る。
「やあやあ我こそはENNIO Z――」
「隙ありいぃぃぃぃぃ!!」
「うおおおぃぃぃ!! ちょっと待てお前、何攻撃してこようとしてる!? 儀式の途中だぞ!?」
「相手の儀式の途中で隙を突く練習よ。――安心して、みねうちだから。心のね」
「卑怯じゃん!! 滅茶苦茶卑怯じゃん!! というか心のみねうちって何だよ!?
第一この儀式こそが大和魂なんじゃないのか!?」
「私ほら、イタリアの人だから」
最悪だ。この女最悪だ。ZANINIは直感的にそう思った。
「大体な、そんなに焦らなくても大丈夫だろ? 客観的に見ても君のほうが全然人気があるだろ。
ベテランなんだし。もっとそういう感じでどっしり構えてればいいんじゃないのか?」
「ベテランらしく……」
そのZANINIの言葉にCHRISTINEは少し考え込むと、ふぅ、と一息、息を吐いた。
「――そうね。何を焦ってたのかしら私。もっとベテランらしく、先輩らしい行動を取ればいいのよね」
「そうそう」
やはり大人な分だけ落ち着きがあるのか、とZANINIが思っていると、CHRISTINEは携帯電話を不意に取り出し、
何処かへダイヤルし出した。
「――あっ、メリッサ? 私、CHRISTINA。お願いがあるの。うん。
――AI YAMAMOTOの飲み物に下剤を今度入れておいて」
「ちょい待てぃぃ!! 何だ今の聞き捨て成らない台詞!? 下剤!?」
「先輩らしく、後輩を使って成敗」
「するなよ!! 先輩なら暖かい目で見てろよ!!」
「見てるわよー、メリッサとかALESSIAとか」
「AI YAMAMOTOもだよ!!」
とんでもない先輩である。
「――やっぱりあれね、直接対決しかないわね」
そう言うとCHRISTINEは、壁に立てかけてあった旗を持ち、掲げるようなポーズを取る。
「――何だその旗? 何て書いてあるんだ?」
「風林火山、って書いてあるの。何でも日本の有名な武士がスローガンとして使っていたんですって。
4文字それぞれに意味があるのよ。――例えば風」
そういうと、まだ覚えきれていないのか、CHRISTINEは自分の鞄から本を取り出して
ページをペラペラとめくっている。
「あ、あったわ。「疾きこと風の如く」――この「疾」っていう文字はね、日本だと
「疾患」とか「疾疫」とか、病気によく使われる言葉なの。つまりこれは、
「その病気はまるで風邪のようだ」って意味が」
「意味がどうなの!? 何そのあらたまった説明!! 病気は風邪のように決まってるだろ!?
というか戦いのスローガンじゃないのかよ!?」
「健康管理はしっかりとね、って意味よ、つまりは」
強引なまとめ方である。
「次。「徐(しず)かなること林の如く」――「徐」っていうのはね、日本だと
おもむろに、ゆっくりと、っていう意味があるみたいなの。つまり、まったりしてて
気付いたら知らない林の中にいましたって意味なの」
「いや途中で気づけよ!! その途中どんな勢いでまったりしてるんだよ!?」
「ENNIO、肝心なのはそこじゃないわ。――林に置いていかれた。完全犯罪よ」
「肝心なのは君の考え方だよどう見ても!!」
「次。「侵掠すること火の如く」――「侵掠」っていうのはね、侵攻して奪い取るって意味。
つまり手っ取り早く相手を痛めつけるには夜な夜な相手の家に火を――」
「嘘だろどう聞いても!! 「侵掠」っていうのが侵攻して奪い取るって意味なら、
火のような勢いで攻めろって意味じゃないのか!?」
そうZANINIが言い切った瞬間、瞬時に沈黙が訪れる。そして――
「――所詮、その程度ね」
「何が!? 何今の呟き!? どの程度なんだよ僕!?」
「それじゃ、次ね」
パッと明るい笑顔に戻り、再び説明を続けるCHRISTINE。――なんとなくダークな彼女は
久々だな、と冷静に考えるZANINIだった。
「最後は「動かざること山の如く」――これはね、何だかんだでA-BEAT Cから微妙に動かない
DOMINOことA.GATTIのことを」
「言ってるわけないだろうがぁぁぁぁ!! 昔の人が言ってたんだろ!?」
「そうよ、昔の人が、「やあやあ我こそはドミノドミノドドドミノ」って」
「言わないよ!! 間違いなく言わないよ!!」
「でもそうじゃないと、靖国神社から霊のお告げがこないわよ?」
「うおおおぃぃぃぃ!! そこでそれを引っ張り出すのかよ!?」

------------(フィクションです)------------

風林火山がテーマなんでしょうか。勢いだけで書いた記憶があります(笑)。
何かもうただそれだけです、はい(えー)。


BACK