その電話に出てしまえば
〜MANUELシリーズ VOL.8〜


俺の名前はMANUEL(名義)。
EUROBEAT界三大レーベルの一つ、A-BEAT Cでシンガーデビューを果たし、
現在はそこでお世話になったプロデューサーについてきた感じでGO GO'S MUSICで
シンガーを務めている。自分で言うのもあれだが、こちらへきてからも俺の曲は好評だ。
「それで、SANDROが言うにはね――」
そして今日もその人気のお陰で新曲の打ち合わせだ。相手はNORMA SHEFFIELDことF.CONTINI。
彼女もA-BEAT C時代からお世話になっている一人だ。
「――と、こんな感じかしら」
「うん、わかった。実際のレコーディングまでに――っと」
と、丁度大体話も終わった所で、俺の携帯電話が鳴り出してしまった。
「すまない、今すぐ電源を落とすから」
「別にもう大丈夫よ、大体話も終わったし」
NORMAのその言葉に甘え、ディスプレイを見てみると――
「――どうしたの? 固まっちゃって」
「いや……見たことない番号からなんだ」
つまり、登録していない番号から電話がかかってきていることになる。
「一応、一度だけ出てみておいた方がいいんじゃない? 万が一変なことになってたら困るだろうし」
というNORMAのアドバイスを受けて、俺はその相手のわからない電話に出ることにした。
「もしもし?」
『…………』
「――もしもし?」
『……はぁ……はぁ……』
息が漏れてる!? 何て怪しい電話だよ!? 何でよりによって俺の電話に!?
……だが。
『……お兄さん……今日のふんどし、何色?』
その一言で、声で、誰だかわかってしまった。
「いや、僕はふんどしじゃないから」
『ぷっ……ぶはははははっ!! 何真剣に答えてるの!?
「いや、僕はふんどしじゃないから。BIG BOYだから」――電話でもセクハラ!? あははははっ!!』
「誰がBIG BOYなんて言ったよ!?」
『じゃあ中の下なんだ!! 微妙っ!!』
「そういう意味でもない!」
電話の相手は――A-BEAT C時代のレーベルメイト、KELLY T.(名義)だった。
目前のNORMAが非常に怪訝そうな表情で見ているのが痛い。
「大体、どうして君僕の番号を知ってる?」
『この前ねー、レコーディングの時にDAVEに教えてもらった』
あそこのレーベルにはプライバシーの問題とかないのか!?
『ね、ね、そんなことよりさ微妙なエロりん』
最早俺の名前のカケラもないぞそれ。多分俺の名前なんだろうけど。
『そのさ、今日のふんどし何色?』
まだ聞くのか!? お前が真剣に答えるなって言ったんだろ!?
「いやだから、僕は――」
『じゃあさー、微妙は何色が好きなのー?』
何だこいつ。物凄い面倒だ。もう縁が無いと思ってたのに。
――ああもう、これは適当にあしらって終わりにしなければ。
「えーと、ほら、青」
『ふーん。――えっとね、金色だって』
変色!?
金色か……DOMINOはそこまで派手なのは好みじゃなかったけどな
しかも微妙に電話先から違う声も聞こえてくるし!! 凄い不安な一言だし!
「いやホント、一体何の用事なんだよ!? 打ち合わせの途中なんだよ!
大した用事がないなら切るぞ!?」
『私を切りたいなら、私達の関係を清算してからにしてよね!
っていうかさ、いつの間にGO GO'S MUSICになってるの? 何がGO GOなの?
具体的にどの時間帯にGO GOなわけ!? この変態!! あははははっ!!』
変態はお前だ。――そう言いかけて我慢して飲み込む。
「……一体誰からの電話なの?」
気が付けば、目の前のNORMAが更に不審な表情で俺を見ていた。――まずい、これはまずい!
俺の信用が! ここは……そうだ、正直に釈明しなくては!
「いや、実はな――」
そう言って、俺が携帯電話を少し自分から離して見せようとした瞬間だった。
『酷いっ! あなた私とそのDOMINOって女、どっちを選ぶのっ!?』
「何の話だよ!?」
『じゃあじゃあ、選ばせてあげる!
1、DOMINO。2、A.GATTI。3、フェデリコのママ。4、DAVEの元奥さん。5、どみのど〜みのゆぉうあまいでぃすてぃにぃ』
全部同じじゃん!?
『6、GO GO'S MUSICの代表の女の人。7、ド、ドミノ!? どうして君がここに!?』
ラストのドラマ仕立ては何処からだよ!?
『決まってるじゃない……あなたを追いかけてきたのよ! こんなところでDOMINOと繋がってたのね!?
あなたを殺して、私も死ぬわ!!』
しかも長っ!! 7番の選択肢長っ!!
『正解は、8番のDOMINOとMANUELでバンバンバン!』
やっぱり選択肢にないところが正解なのかー!!――と思った所で、
「――もしもし?」
「え? あっ」
俺の手から、NORMAが携帯電話を取って変わりに出ている。――俺の変わりに応対してくれるらしい。
まあ仕事の邪魔されてるわけだしな、怒るのも無理ないか――
「何をごちゃごちゃ言ってるのかしらないけど、MANUELはブンブンブンの方が合うわよ」
「ええええええええええ!?」

――俺の名前はMANUEL。
ブンブンブン、蜂が飛ぶ。

------------(フィクションです)------------

すっかり忘れていたKELLY T.救済コントの予定でしたが、
見事に失敗した作品でしたとさ(汗)。


BACK